札幌と福岡という離れた拠点をむすぶことで生まれるかたち。
海辺のSALTで結晶化してゆく、自由な働きかたの未来
こんにちは、広報の沖野です。
今日は弊社の福岡拠点についてのお話です。
弊社の福岡拠点は福岡市西区の今宿という場所にある海辺のシェアオフィス「SALT」の一席です。
席はあるのですがスタッフが常在している訳ではなく、札幌のスタッフがリモートワークという形で訪れて仕事をする場所です。時期は自由ですが、年に一度一人ずつ、だいたい夏の時期に10日〜2週間ほどの期間をこちらのオフィスで過ごすことにしています。
目的としては、もちろんロケーションの良い海辺のオフィスで仕事をすることでリフレッシュになり、デザインやクリエイティブな仕事のアイディア出しに集中できたり、環境や出会う人たちに刺激をもらえることがまずひとつ。
そしてアジアに拠点を10箇所設けることを掲げている弊社としては、そもそものリモートワークという働きかたに慣れるための練習、という意味合いが大きくあります。
Macbookを一台持って、どこに行ってもいつもと同じ仕事ができるようになる。出張の少ないスタッフでも将来的に色々な働きかたができるようにトレーニングをしてみているという訳です。
まぁ実際には水着だの麦わら帽子だの自転車だのも一緒に詰め込んで半分夏を満喫しにゆくのですが…札幌は夏が短いですからね。
さて、今回はわたしがSALTに滞在している期間中に、SALTをはじめ多数のシェアオフィスや地方移住に関する事業を運営されている株式会社スマートデザインアソシエーション(以下SDA)の代表、須賀さんにお話を伺うことができました!
弊社がSALTに拠点を設けたのはわたしの入社前ということもあって、そもそものSDAさんの歴史やSALTという場所を作った理由など、いちからお話ししていただけましたのでぜひお読みいただければと思います。
SALTはワークだけでなく目の前の海でSUPもできるオフィスなんですよ。
まずはSDAさんについて、どのような会社なのか教えていただけますか?
SDAは今年で15年目の会社です。会社を作ったきっかけとしては、大学の時にロンドンのデザイン集団「Tomato」(ディレクター、デザイナー、芸術家、作家、プロデューサー、作曲家などが集まってプロジェクト開発をし、様々な形式のデザインや映画制作をする集団)を知って、一つのビルの中で様々なジャンルのクリエイターがいろんなプロジェクトをやっているときいて…これだなと思ったんです。いつかこんな空間をつくりたいなと。
ちょうど日本の社会的には就職氷河期の始まりで、大きい証券会社が潰れたりして、今までの日本の会社のシステムが崩壊し始めていた頃ということもあって…ピラミッド型の古いシステムではなく、プロジェクト型でクリエイターがつながりながら小さく始めたビジネスを大きく育てて行く方がおもしろいなと考えました。ギルドのような特殊な技術者を囲うようなあり方ではなくどちらかというとオープンでネットワーク型の組織がイメージに近く、Associationという名前はそこから取っています。
個人的には、元々はエンジニアです。ECサイトを構築する日本で初めてのパッケージソフトを開発したり、大学で使うEラーニングのパッケージソフトを構築したりしていました。26歳で独立して、上記のようなアソシエーション型の組織を目指してとにかくわき目もふらず必死に働いて。
そして、10年経った頃にあの震災があって。どうしてこの会社をやってるのかとか、どこで生きて行くべきかなど…当時子供が2歳だったこともあって、もう一度考えるタイミングになったんです。
改めてみると、作った会社も40名近くの組織になっていて、そうしたくなかったはずのピラミッド型の組織になっていたし、自分の仕事もその組織を維持するための仕事になってしまっていて、ビジョンを脇に置いてしまっていたことに気づきました。
そこで、原点に帰ろう、アソシエーション型の仕事をもう一度しようと思ったことが地方移住のきっかけになりました。会社の中でも、原発の影響もあってスタッフが沖縄や北海道に行ったり、逆に支援のために東北行ったりと分散し始めていたので…ちょうど5年前の昨日くらい(8月末ごろ)に自分も福岡に一人で移住したんです。
当時は特に代表が地方移住するっていうのは事例として少なかったですし、スタッフも半分は退職しましたが…もう半分のスタッフは興味を持ってついてきてくれたので、分散型の働きかたというのを始めました。その頃が第3創業期みたいな感じの時期ですね。
その頃に「福岡移住計画」も生まれた?
その5年前に始めたのが、会社の中の一つのプロジェクトとしてスタートした「福岡移住計画」です。地方に移住する上で欠かせない、「居・職・住」にスポットをあてて。特に居場所づくりの部分では、自分も移住してきた頃コミュニティに入っていく方法がわからなかったんですよね。誰と仕事をするのか、どこに営業したらいいのか、全て手探りだった。
最初は福岡市内のシェアオフィスに入りました。そこで働くメンバーがとても楽しそうに働いていたり、ITと建築のメンバーが新しい場づくりで協働していたりと、とても刺激をうけました。自分もそろそろ自分の場を持ってコミュニティを作ろうと、そのシェアオフィスの建築のメンバーに協力してもらって、最初は糸島にシェアオフィスを作ったのがこのSALTの前例となるライズアップケヤという物件です。
当時福岡でシェアオフィスといえば街中にあるものだったんですよね。そんな田舎にオフィスを作っても上手くいくのかなとは自分も周りも思っていました。
でもいざやって見たら、仲間になってくれた移住者と一緒に日々発信をして行くと、そんな辺鄙な場所でもいろんな人が遊びに来てくれたんです。仕事だけじゃなく、糸島でアウトドアウェディングをやりたいとか、暮らしを実験的に作っていきたいという人たちに使ってもらえました。
そこから、重要なのは場所ではなくて、あくまで発信するエネルギー次第で人は来てくれる、ということを実感し始めましたね。そうやって手応えを感じていた頃に、今SALTとして利用しているビルが空いてることを知ったんです、たまたま隣に住んでて。住んで居たからこそ、福岡の中心地からアクセスもよくて、駅から5分くらい歩けば海にも来れるし便利な場所だと知っていましたから、ここなら自然とつながりながら経済的にも損なわずにビジネスと自然共生を両立できると思ったんです。それが2年半前のことになります。
そこから今日までSALTはどう変化したんでしょうか
まずは建物の3Fからスタートして、入居していたのは3人でしたね。今宿というのも、当時は市内では通り過ぎる場所というか…(笑)、糸島は有名になってきましたけど、今宿はそこに向かう単なる通過点になってしまっていたんです。でも糸島でシェアオフィスを作ってみて、場所は関係ないとわかった実績があったので、ここからちゃんと発信していこうと。
SALTという名前は、塩って、熱で海水をたいて結晶化してゆくものなので、『自分たちの熱量でプロジェクトを結晶化させてゆく』というイメージがあります。これは、僕らがサイトをお手伝いさせて頂いた糸島のまたいちの塩さんからインスピレーションをうけた部分もあって。未開の竹藪を切り開き、セルフビルドで窯をつくり、海水から見事に旨味のある塩を作られていて…移住後ここを訪れ、心よりリスペクトしてつけた名前でもあるのです。
SALTについては、段階としては、まず自分たちのような移住者が使い始めて。それから東京から移住してくるクリエイターのメンバーが入ってくれるようになって、少しずつ今宿に移住者が増えてきました。
そこに1年経ったあたりでGear8さんが入ってくれたんですよね。それがすごく話題になったんですよ。福岡市とか、行政も注目してくれたんです。地方創生ということで移住という言葉が注目され始めていたけれど、そこに重なるようにして働きかた改革というものも出てきた時期で。そこに、わざわざ交通費や滞在費をかけて札幌から来て、福岡で働く会社があるんだっていうことが新しい事例になりました。それが次のフェーズの始まりでしたね。
それは弊社としてもすごく嬉しい反応ですね。
最初はなんとなく外からは移住者がのんびりするためにやってるオフィスと思われていたのが、Gear8さんみたいな会社が入ったことで対外的にもバリューが上がったと思います。外からはのんびり見えていても、自分たちはきちんとこの場で事業を成功させようと思っていて。SALTの立ち上げから入居していたウミーベ株式会社も、次の段階に行くタイミングで建物の5Fに上がってくれて、3Fのシェアオフィスで成功して5Fに事務所を構える、みたいな流れも生んでくれました。これも大きなフェーズだと思います。
そこから、元々レストランだった2F部分を利用して、フリーアドレスのオフィスを作ったのが2017年の4月。ここはレストランということでキッチンがあったので、それがありがたい空間です。
仕事もテクノロジーの話だけじゃなく、それをどうやって地域の資源と掛け合わせたらいいのかといったことをずっと思っていたので、一つとしてまずは地元にある食材を知ってもらうためにキッチンも活用しようと考えました。
食材を使って、ここにいるクリエイターが生産者の方と繋がってプロダクトを作るとか、もちろんそのまま食べてもいいけど、新しい食べ方や料理にしてイベントを実施する、ライフスタイルを生む…そういう発信が実現できたのが大きいですね。最近では、料理が得意な地元のママさんたちに協力してもらって、糸島や地元でとれた新鮮な食材を活かし、シェアオフィスのメンバーに健康的な食事を提供するSALT給食も始めました。
現在SALTを利用されているのはどんな職業の方が多いんでしょうか
7割くらいはITやデザイン、それに付随する映像制作などの方ですね。
残りの3割が映画配給会社や、バイオの研究をブランディングしてる会社とか、大手企業の地域創生チームとか、だんだん幅も広くなってはきています。
今はワークスペースが東京都内含めて8拠点あって、ワークスペースと、周辺の空き家などを民泊で活用して滞在できるところをむすぶ事業をしています。SALT周辺も6つの物件で泊まれる場所を作っていて、宿泊にきた海外の方などがSALTで働く、という形もでき始めています。旅行と仕事の境目もどんどん融けてきているように感じますね。
それこそ、Gear8さんみたいにいろんな地域でプロジェクトに参加して行くってかたちになるんだろうなあと実感しているところです。
SALTとしても、Gear8が入ったメリットはあった、ということでよろしいですか(笑)
ありがたいですし、良かったです(笑)
やっぱり今、地方創生として…地域のプレーヤーがその地域で新しいことをやって行くのも、それ自体はすごくいいことだけどどうしても「点」で終わってしまうところが大きいなと思っていて。
そんな中で、「北海道と九州が繋がっている」っていうのはいい意味ですごくわかりやすいコンセプトになりますよね。アジアの玄関と言われる福岡だけど、実際のところ活かせてるのかというのは福岡ではよく出る話題なんです。
その場所を、台湾やタイに事務所があるGear8さんがうまく使おうとしてくれているのが大きいと思います。自分たちもそうしていきたいし、やるべきなんですが。海外のプロジェクトでもう一度自分の力を試したいとも考えていますね、人口減少の問題なんかはこれからアジア各地でも起こってくる問題で。そういったものに対するアジアのプロジェクトにも参加したいので、そういった部分でもギアエイトと一緒にプロジェクトを組んでいきたいと思います。
それは、ぜひやりたいです!
具体的にコラボしたいんですよ。今度は一週間くらい自分たちが札幌に行こうと思ってます、この秋〜冬くらいには。Gear8のメンバーとディスカッションをしたりもしてみたいですね。北海道に住んだことはないですけど、雪の中にレンガ造りの建物があったりとか、ストーブでお湯を沸かす湯気の感じとか、イメージ的な憧れはあります(笑)
最後に、SDAさんの今後としてはどんなことを考えていますか?
現在福岡や東京、茨城などの国内とシンガポール・ハワイの海外も含めてワークスペースが10拠点があり、10月には久留米にも拠点ができますし、今後50拠点を目標に増やしていきます。そして、今ある拠点や新しくできる拠点をつなげていこうと考えています。
その中でも、アジアに拠点を増やしていくGear8さんとも組んで色々やっていきたいですね!
ありがとうございます!今後のSDAさんのご活躍もとても楽しみにしています。
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須賀さんにとても真摯に、詳しくお話を聞かせていただけて、滞在中にわたし自身も改めて自分の働きかたについて考える時間ができました。東京から札幌に移住してまだ1年くらいですが、来るまではちゃんと仕事ができるかビクビクしていた今回の福岡リモートワークも、来てみたらなんとかなっていますし(笑) 不安よりも新しい出会いや新鮮な環境に助けられることの方が大きかったかなと思っています。
弊社もアジア10拠点に向け、改めて気合いを入れねばというところですね!SDAさんと一緒に、たくさんの点をむすんでいきたいと思います。
最後に、滞在中に撮っていただいた素敵な写真で締めくくりたいと思います。
みなさま、今宿はとっても気持ちの良いところですよ。