北海道で、地域に身近なそば屋として長年親しまれている「ごまそば八雲」の公式サイトをリニューアルしました。これまで看板制作などでご一緒してきたご縁からご相談をいただき、デザイン・設計・撮影・実装までを一貫して担当しました。
サイトは制作から10年以上が経過しており、スマートフォン未対応やセキュリティ未整備といった技術的な課題を抱えていました。今回のリニューアルでは、そうした課題の解消に加え、スマートフォン対応はもちろん、ごまそば八雲らしいさっぽろの街に馴染み親しまれている世界観を可視化するブランドイメージ刷新にも注力。とくに「八雲」の由来ともなる雲イラストの書き起こしや、店内や料理の写真を撮り直すなど素材づくりもお任せいただき、八雲を知らない方に対しても、これまでとこれからのお店のイメージや安心感を持ってもらえるサイトに仕上げました。
また、社内資料として眠っていた沿革をもとにヒストリーページを新設し、採用情報の整備も実施。ウェブならではの情報整理と発信力を活かし、今後の展開にも対応できるサイト構成としました。今後もお客さまと店舗、働く人をつなぐ発信拠点として育てていけるよう、継続的にサポートしてまいります。
世代を超えて札幌で愛される蕎麦店を目指して。

昭和49年創業、札幌が誇る「ごまそば」の名店、八雲。その前身である喫茶「銀の壺」から数えれば約80年、この街とともに歩んできた老舗蕎麦店のウェブサイトを、私たちGear8がリニューアルさせていただきました。
事業承継というタイミングを迎え、ブランドイメージの更新と顧客接点の拡大、そして採用活動の強化を目指した今回のプロジェクト。デザインの刷新だけでなく、八雲が大切にしてきた「工夫」の精神を、どうデジタル上で表現するか。私たちは、長い歴史の中で育まれてきた店づくりの本質と向き合いながら、次の時代へと繋ぐウェブサイトを目指しました。
「普段使い」を支える、見えない工夫

目を見て、熱を感じて、本音をぶつけ合うことでしかわからないことはたくさんあります。だからこそGear8のプロジェクトは、お互いにじっくり腰を据えて話し合うことからスタートします。
今回のプロジェクトで私たちが最初に向き合ったのは、「サイトデザインの古さ」という表層的な課題ではありませんでした。ミーティングを重ねる中で見えてきたのは、ステークホルダーを広げる必要があること、持続可能性に関わる本質的な課題でした。若い世代に八雲を知ってもらい、親しんでもらうために、私たちは何を伝えるべきなのか。
実はにしりん様とわたしたちの関係は、このウェブサイトリニューアルが初めてではありませんでした。これまで店舗メニューの多言語展開などをお手伝いする中で、私たちは八雲の強みをすでに感じ取っていました。それは「工夫を凝らし続ける姿勢」です。
全店共通のレギュラーメニューはあるものの、各店舗では来店客の属性に合わせた独自メニューを展開しています。年配のお客様には券売機の操作を一緒にサポートし、昼時のビジネスマンには提供スピードを上げるべく動線や食器の配置を変える。高級店ではなく、ふと思い出したときにさっと入れる「札幌のインフラ」であり続けるために、日々、細やかな工夫を積み重ねています。
この「工夫」こそが、八雲が50年以上世代を超えて愛され続けてきた所以だと理解しました。
八雲立つ、その名前の奥にあるもの

プロジェクトのメインディレクター石塚亜衣は、徹底的に八雲の歴史を紐解くことから始めました。にしりん様から提供された会社の歴史がまとまった資料を読み込んだ後、彼女が手に取ったのは『古事記』と『八雲風土記』です。店名の由来を、その源流まで遡って理解しようとしました。
「八雲」という名は、日本最古の和歌に登場します。須佐之男命が詠んだとされる、この歌。
八雲立つ
出雲八重垣
妻籠みに
八重垣作る
その八重垣を
誰かを想い、守るために重ねられた八重の垣。このイメージを、私たちは今回のメインビジュアルに据えることにしました。幾重にもかさなる雲を、蕎麦を茹でる湯気に見立てる。そばの香りと、笑顔がひろがるお店でありたいという想い。50年間、札幌の人々の日常を支えてきた八雲の本質が、この古の和歌と重なって見えました。
新しいビジュアルを初めて見たとき、にしりん様からは率直な反応がありました。「これまでの八雲とだいぶ印象が変わるので、社内やお客さんが付いてこれるか心配」確かにそれは当然の懸念です。長年親しまれてきたブランドイメージを変えることのリスクは、誰よりもにしりん様が理解されているからです。
それでも、事業承継というタイミング、若い世代との新しい接点を作るという目的を考えれば、一定のインパクトが必要でした。議論を重ねた末、にしりん様は変化への覚悟と、未来への期待を込めて新しいビジュアルを受け入れてくださいました。
閉店後の厨房から立ち上る湯気、湯気、湯気

プロジェクトの転換点となったのは、札幌市内2店舗で実施した撮影でした。ウェブサイトリニューアルのプロセスは、コンテンツ企画、デザインや動線設計、素材制作、そしてコーディングやシステム開発という流れで進みます。その中でもサイトの印象を左右する撮影は、クライアントとの協働作業です。これは両社の関係が最も深まる瞬間でもあります。
開店前と閉店後という、店舗にとって最も忙しい時間帯。それでも、にしりん様のスタッフの皆さんは驚くほど協力的でした。何度も繰り返し、撮影のための動作をしてくださる。特に蕎麦を茹でるシーンは難しく、閉店後の厨房で店長に何度も蕎麦を茹でていただきました。

ウェブサイトに掲載されている、印象的な湯気が立ち上る動画。あの湯気を作るための工夫は、カメラマン、ディレクター、そして店舗のスタッフ、みんなで作り上げたものです。早朝から夜遅くまで続いた撮影は確かにハードでしたが、一つのビジュアルを共に創り上げる時間を共有することで、更にプロジェクトに一体感が生まれました。
普段から「工夫を凝らし続ける」ことを実践しているカルチャーを持っている組織だからこそ、撮影という非日常の中でも、その姿勢は変わらなかったのだと思います。
晴れの日も、ハレの日も、たぶん明日も

新しいウェブサイトのトップページには、こんなキャッチコピーが掲げられています。
晴れの日も
ハレの日も
たぶん明日も
ごまそば八雲
ハレの日もケの日も、シーンやシチュエーションを選ばない。ひとりでも、家族でも、友人でも、仕事仲間でも。肩肘張らずに、いつでも気軽に立ち寄れる場所。それが八雲の目指す店づくりです。
「たぶん」という曖昧さは、約束や義務ではなく、自然な選択としての八雲を表しています。特別な理由がなくても、ふと足が向く場所。それが、八雲らしさなのです。
サイト公開後、にしりん様からは「とてもカッコいい」「自分たちのウェブサイトとは思えないくらいオシャレ」という声をいただきました。特にトップアニメーションの雲が晴れて蕎麦を茹でる動画が現れる演出には、ストーリー性を感じてもらえたようです。また、歴史を振り返るコンテンツについては、「所属している会社の成り立ちを知れて良かった」という社内からの声もありました。
「店長たちのおすすめ」というコーナーでは、おすすめ商品だけでなく、おすすめの食べ方にまで言及しています。各店舗が独自に凝らしている工夫を、デジタル上でも表現する試み。これもまた、八雲らしさを伝えるための仕掛けです。
良いコミュニケーションが、良いウェブサイトを作る

振り返ってみれば、にしりん様とのミーティングはいつも笑いが多く、良い意味で雑談が多かった印象があります。プロジェクトを進めるためのミーティングというよりも、お互いを深く理解し合い、何気ない会話や行間からクリエイティブを探っていく作業。それが心地よかったのです。
担当ディレクター石塚のこだわりと、プロジェクトに対する愛。にしりん様からは「いつもアイデアフルでこだわりがあり、ミーティングでも話しやすい」という評価をいただきました。
確かな技術や、魅力的なクリエイティブ、回遊しやすい動線設計。それらはもちろん重要です。しかし、その根底にあるのは、良いコミュニケーションであり、これこそが良いウェブサイトを作る基本になる。今回のプロジェクトを通じて、私たちは改めて実感することができました。
そして、もう一つ。工夫をやめないこと。クライアントであるごまそば八雲が50年間実践してきたこの姿勢を、私たちも制作プロセスの中で体現できたからこそ、今回のウェブサイトは生まれたのだと思います。
約 10ヶ月に渡ったウェブサイトリニューアルプロジェクトを通して廣川社長からコメントをいただきました。
廣川社長のコメント
Gear8様とのミーティングは要点が常に明確でわかりやすく、きめ細やかなフォローにも支えられて心強く感じておりました。私たちが大切にしてきた“八雲らしさ”を新たな視点で深く理解してくださり、自分たちでは言語化しきれなかった想いや価値まで丁寧にくみ上げ、ホームページに反映していただけたことに心より感謝しております。今回のリニューアルは、八雲の原点を振り返り、今後の未来を見つめ直す貴重な機会となりました。
札幌のソウルフードへ

北海道は歴史的に様々な文化が混在するエリアです。それぞれの良さを上手に取り入れながら、豊かな食材を活かして美味しさをアップさせてきた場所。札幌発祥とされる「ごまそば」は、風味と健康効果の高いごまと蕎麦を掛け合わせた、独自の食文化です。
八雲は、札幌の皆さんの健康に気を遣いながら、この文化を継承してきました。そして私たちGear8としても、札幌市民として、ごまそば八雲は街の風景の一つだと思っています。
10年後、20年後。「札幌のソウルフードと言えば八雲」と呼ばれるようになっていたら。
いつでも入れる蕎麦屋さんとして、この街のインフラであり続けてくれたら。それが、今回のウェブサイトリニューアルを通じて私たちが描く、未来の景色です。
最後に、代表の廣川様、そして担当いただいた大橋様と山川様に、心から感謝を申し上げます。これからも、しっかりサポートしてまいります。