2025.04.01

あなたの乾杯がエールに変わる。クラフトビールを通じたアート支援の新しいかたち。

Chihiro Okita

みなさん、覚えていますか?

2024年9月、Gear8が15周年を記念して、月と太陽ブルーイングさんとコラボレーションして誕生したオリジナルビール「EIGHT HAZY IPA」。

>>15周年企画の記事はこちら

Gear8の15周年記念として限定販売されたこのビールが、ありがたいことに多くの反響をいただき、このたび月と太陽ブルーイングさんの店頭や一部スーパーで一般販売されることになりました。

「たくさんの方に手に取ってもらえるなら、ただ販売するだけではもったいない。」

そう感じた私たちは、“アートと社会を繋ぐ支援”というビジョンを重ね合わせ、このビールにもうひとつの意味を込めることにしました。

その想いに共感してくださったのが、札幌を拠点に活動するアトリエペン具さん。
今回のコラボレーションを通じて、ビールを購入することがそのままアート支援につながる仕組みが実現しました。また、自閉症や知的障がいのあるアーティストの方々にもご協力いただき、アート作品をビールラベルやオリジナルおみくじサイトのデザインとして採用。さらに、売り上げの一部はアート支援に使われ、アーティストの画材として提供されることが決まりました。

写真は、アトリエペン具の代表 卜部奈穂子さん(写真中央)と、月と太陽ブルーイングの代表 森谷祐至さん(写真左)、Gear8の代表 水野晶仁(写真右)。アトリエペン具の見学時に撮影した一枚。

この記事では、本プロジェクトをともに形にしてくださった3人のスペシャルパートナー、アトリエペン具の代表 卜部奈穂子さん(写真中央)と、月と太陽ブルーイングの代表 森谷祐至さん(写真左)醸造長 佐々木啓大さんに、プロジェクトへの想いや背景を伺いました。



アトリエペン具 代表 卜部奈穂子さん
1973年、札幌市生まれ。社会福祉士、介護福祉士、公認心理師。障がい児者の支援員として働く中で、利用者の作品に感銘を受け、芸術とその「想い」に興味を持つ。退職後、芸術療法を学び、2003年にペングアートを開始、現在、5つの事業を運営。


月と太陽ブルーイング 代表 森谷祐至さん
1979年、小樽市生まれ。月と太陽BREWING㈱代表取締役兼オーナーブルワー、料理人。2014年、札幌創成川でクラフトビールの醸造所兼飲食店を開業。「北海道をクラフトビール王国へ」を掲げ、地域との連携や啓蒙活動に積極的。


月と太陽ブルーイング 醸造長  佐々木啓大さん
1994年、札幌市東区生まれ。北海学園大学を卒業後、月と太陽BREWINGに入社。本店店長、白石工場主任を経て、2024年10月に醸造長に就任。クラフトビール初心者やビールが苦手な方にも美味しいと言っていただける、穏やかで飲みごこちの良いビール醸造を得意としている。


だれもが応援できる新しいかたち

「EIGHT HAZY IPA」が一般販売に至った経緯について教えてください。

森谷さん:「EIGHT HAZY IPA」は、ギアエイトさんの創立15周年を祝う記念ビールとして、「こんなビールを作りたい」という想いを最大限に反映して仕上げた、思い入れの強いビールです。 当初は限定販売の予定でしたが、弊社直営店で樽生として提供したところ、予想を上回る反響がありました。それで僕としても、もっと多くの方々にこのビールの美味しさを楽しんでいただきたいという気持ちが強くなり、改めてギアエイトさんにお声がけし、一般販売に至ることが決まりました。

水野:最初は本当に驚きました!たしかに仕上がりには非常に満足していましたし、ビールが苦手なGear8のメンバーや、クライアントの方々からも好評をいただいていました。
販売に向けて動き出すことに迷いはありませんでしたが、ただ販売して終わるのではなく、なにか社会のためになることと結びつけたいと考えました。
その時に真っ先に思い浮かんだのが、札幌で障がいのある方々を支援している「アトリエペン具」さんでした。何か一緒にできることがあれば、と思いましたね。

卜部さん:お声がけいただいたときは本当にうれしかったです。 アトリエペン具としても、これまでもいろいろな形で社会とつながる活動を模索してきました。このプロジェクトへの参加を通して、さらに多くの方々にアートの力を届けることができると感じましたし、新しい取り組みにチャレンジできることが素直に嬉しかったですね。ビールとアートの組み合わせという点も新鮮で、ワクワクしました。

今回どのような想いで本プロジェクトに参加されましたか?

森谷さん:このプロジェクトに惹かれた理由は、障がいのあるアーティストたちへの支援という目的に強く共感したからです。 ビールの売上の一部が、アート制作に必要な支援に充てられる。そのアートが多くの人の心に届く。その循環が、とても素晴らしいと感じました。 ビールは一般的に「嗜好品」として、飲む人だけの楽しみだと捉えられがちですが、誰かを支える力にもなれる。そんな風に感じられることが醸造家としての本望だなって思っています。

卜部さん:アートが社会に繋がることで、作家たちの表現の幅が広がり、さらに多くの人たちにその魅力を伝えることができる。アーティストたちにとっても、そうした経験が大きな励みになりますし、創作へのモチベーションにもつながりますよね。そして、このプロジェクトは「障がいの有無を超えて、人と人をつなぐ場所を作る」という意味でも、非常に大切な取り組みだと思っています。アートを通じて、作家たちが自由に創作できる環境を守りながら、どんどん新しいつながりを生み出していきたいですね。

水野:アイデアの段階からスタートし、実際にこうして形になっていくと本当に嬉しいですね。ビールを飲んで楽しんで、その喜びがそのまま支援に繋がる、そんな循環ができることが大きな魅力だと思います。アートと社会を繋げる新しい形が広がっていくことを、これからもっと実感できるようになればいいなと思っています。

アトリエペン具のアート作品とビール企画のタイアップが実現しましたが、その点について教えていただけますか?

卜部さん:アトリエペン具のアーティストたちが生み出す、個性豊かな作品がこうして社会とつながることで、新たな価値が生まれていると感じています。 このプロジェクトをきっかけに、表現の幅や活動の場がぐんと広がりましたし、作品を通してアートの魅力を伝える機会も増えました。これからも、さまざまな形でアートを社会に届けていきたいと思っています。

水野:実は企画を本格的に進める段階で卜部さんにご相談して、アトリエペン具さんの活動を実際に見学させていただいたんです。アトリエの空間には、のびのびと絵を描く作家さんたちの姿があって、一人ひとりの表現が本当に自由で、力強くて。あの時間がすごく印象に残っています。
あらためて、アートとビール、この2つを通して、社会と緩やかにつながる小さな仕組みが作れたらいいなと思いました。

森谷さん:僕もアトリエペン具さんを訪問させていただいたんですが、本当にすばらしい空間でした。作品だけでなく、創作する過程やその場の空気にも感動しました。 
最初は“ビールのラベルにアート作品を使う”ということで、どんな風になるのか正直イメージが湧いていなかったんですが、現場を見て「これは絶対に形にしたい」と思いましたね。作家さんたちの表現がそのまま力を持っていて、そこにビールという媒体が重なることで、もっと多くの人に届くんじゃないかって。

目指したのは「みんなの笑顔を紡ぐビール」

ブルワリー内部の様子。作業はすべてブリュワーの手作業にて行われる。正確な時間と温度管理が美味しいビールのポイントですと語る、佐々木さん。見学時には、仕込み釜や発酵タンク内のビールが泡立つ様子も見ることができた。

素材選びから製法まで、トライ&エラーの連続。理想の美味しさを追い求めてようやく完成した「EIGHT HAZY IPA」。妥協なきクラフトマンシップでこのビールを仕上げた、月と太陽ブルーイングの醸造担当・佐々木さんにお話を伺いました。

「EIGHT HAZY IPA」の醸造において、こだわったポイントや探求した点はどこでしょうか?

佐々木さん:普段、ビールの原料はドイツやアメリカなど海外からの輸入が中心なのですが、今回は一部に希少な北海道産モルトとホップを使用しました。まだ生産量も少ない中、道産原料を取り入れることで、他にはない個性を出せるのではと感じたんです。
フレッシュで飲みやすい“Session Hazy IPA”のスタイルに、道産モルトならではの力強いコク、そして道産ホップの瑞々しい香りが加わって、このビールならではの特徴になったと思います。

佐々木さんにとって今回のビール、仕上がりはどうでしたか?

「EIGHT HAZY IPA」に使用している麦。醸造の過程で麦を使用することで、濁った(英語でHazeは濁ると言う意味)ビールに仕上がっている。

佐々木さん:使用したホップは全部で8種類。コメット、シムコー、モザイク、エルドラド、アイダホ7、ストラータ、シトラ、そして北海道・和寒町産のザーツ。まるでミックスジュースのような、甘やかなアロマが印象的です。
グレープフルーツの爽やかさに始まり、白桃のやさしい甘さ、パインやパッションフルーツのトロピカル感、ライチのような清涼感まで、さまざまな香りが層のように重なり合っています。苦味はあえて控えめに、アルコール度数もやや低めに設計しているので、ビール好きの方だけでなく、ふだんビールが得意でない方にも楽しんでいただける味わいに仕上げました。果実をぎゅっと絞ったようなジューシーさと、ふわっと広がる香りに注目していただけたら嬉しいです。

どんな人に届けたいと思っていますか?

佐々木さん:一番は、ビールが苦手な方にこそ飲んでいただきたいですね!
醸造家として「これなら飲めるかも」と思ってもらえるようなレシピを意識して組み立てました。やっぱり、自分が「美味しい!」と思って作ったビールを、誰かが「美味しい!」って言ってくれた瞬間って、ブルワーにとっては本当に嬉しいんです。自分の「おいしい」が、何倍にもなって返ってくるような感覚ですね。

これからの時代にビールができること

“アートと社会を繋ぐ支援”というビジョンを形にした「EIGHT HAZY IPA」が、いよいよ発売へ。企画に賛同し、このプロジェクトを共につくり上げてきたスペシャルパートナー3名に、それぞれの想いを伺いました。

“アートと社会を繋ぐ支援”さらなる発展へ向けて。今回タイアップしたスペシャルパートナー3名の想いを教えてください。

卜部さん:創作を通じて自己表現ができること、そしてそれが社会とつながっていくこと。このプロジェクトを通じて、そんな機会が少しずつ広がっていることを嬉しく思っています。
今後は、企業やブランドとのコラボレーションをもっと増やしていきたいですね。作品を発表できる場をつくることはもちろん、創作環境の整備や、アーティストへの適正な収益の還元にも取り組んでいきたいと考えています。

森谷さん:ビールって、ただの「飲み物」ではないと思うんです。
地元のアーティストやコミュニティ、農家の皆さんと関わることで、もっと地域に根ざした存在になれる。今回のプロジェクトでも、その手応えを感じました。
これからは北海道産のホップや麦芽など、地元の素材にももっと目を向けて、北海道ブランドのビールづくりを進めていきたいです。ビールが“嗜好品”で終わるのではなく、社会の中で意味を持つ存在になっていくように。そんな想いで、今後もビールづくりに向き合っていきます。

佐々木さん:今回のプロジェクト、本当に楽しかったですね。缶のデザインも最高でしたし、できれば今後も続けていきたいなと思っています。たとえば、イラストごとに味の違うビールをつくってみるとか、その作品に合うフレーバーを考えるとか、そういう“アート×ビール”の掛け算って、まだまだ面白くできるはずです。
買って飲むだけで誰かの支援につながる。そんな仕組みって、シンプルだけどすごく力があると思います。缶を手に取った人が、「ちょっといいことしたかも」って思える。
その気持ちも、ビールの美味しさの一部になれば嬉しいですね。

水野:アートには、言葉や立場を超えて、人と人、社会と人をやさしくつないでくれる力があると思っています。 今回のように、障がいのあるアーティストの方々の表現が自然なかたちで社会に届くこと、それ自体がとても意味のあることだと感じています。
「かわいい」「素敵」「なんか好き」
そんなふうに、純粋な感覚で作品に触れてもらえることが、アートと人をつなぐ最初の一歩だと思っています。

このビールが、誰かの暮らしの中にそっと寄り添い、小さなやさしさや気づきを運んでくれること。 アートと社会を緩やかにつなぐ“ハブ”のような存在になれたら、私たちGear8としてこれ以上嬉しいことはありません。

一杯のビールが、誰かの笑顔につながる。 そのきっかけを、これからもつくっていけたらと思っています。

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Chihiro Okita

1992年2月に札幌生まれ。医療業界で営業事務・広報を経験した後、2020年にIT業界に転職。アプリサービスのグロース・マーケティング施策の企画立案などを担当し、IT・Web業界の経験と知識を蓄えました。その後、ご縁あって2023年にGEAR8へ入社し今に至ります。
ギアエイトとの出会いは、医療業界の企業で勤めていたとき。一緒に仕事をさせていただく中でメンバーの「人柄」に惚れ、以来7年間ずっと片想いしていたくらい大好きな会社でした。

元々発注者(ギアエイトのお客さんでした)だったので、クライアントの視点でわかりやすく丁寧に仕事をすることを大切にしています。

お休みの日は、サーフィンや登山・スノーボードが好きなので、外遊びをしてリフレッシュしています。