2026.09.18

映像案件を持ち寄って考える。TERAKOYA 8で共有した「動画ディレクション」のリアル

Yusuke Hatano

ディレクターの秦野です。

GEAR8では、ディレクターを中心にメンバーのスキルアップを目的とした社内勉強会「TERAKOYA 8」を、だいたい毎月1回のペースで開催しています。

今回のTERAKOYA 8では、これまで各ディレクターが担当してきた映像案件を持ち寄り、提案方法や見積もり、撮影時の工夫、ディレクションで苦労したことなどを共有しました。

まずは、GEAR8の中でこれまでどんな映像案件をやってきたのか、その経験を共有するところから始めようという回になりました。実写のインタビュー映像、モーショングラフィックス、採用動画、海外向けプロモーションなど、ひとことで「映像」と言っても内容はさまざまです。

対談ムービーは、撮影前の“空気づくり”が大事

最初は、設備関連企業のWebサイトで制作した対談ムービーについディレクターの石塚(あ)から。

育休から復帰した男性社員を交えたクロストークを撮影し、Webページの冒頭に30秒ほどのダイジェスト動画、その下にテキスト記事を掲載する構成でした。撮影では複数台のカメラを入れたこともあり、出演する社員さんがかなり緊張してしまったそうです。

そこで改めて感じたのが、動画撮影では、写真以上に現場の雰囲気づくりが重要だということ。事前に質問内容を共有する。撮影前に雑談して緊張をほぐす。誰がどのタイミングで声をかけるかを決めておく。こうした準備が、最終的な映像の自然さにかなり影響します。また、動画とスチール撮影を同時に行う場合は、撮影順やカメラマン同士の動きまで事前に整理しておく必要がある、という反省点も共有されました。

アニメーションだけでブランドを伝える

続いては、通信インフラ系企業のブランディングムービーについてディレクターの石岡から。こちらは実写撮影をせず、モーショングラフィックスを中心に制作した案件でした。

映像クリエイターさんにディレクションを依頼しながら、企業の事業内容やブランドイメージをアニメーションで表現しています。同じ企業では、採用説明会で使用する3分程度のスライドショー動画も制作。こちらはナレーションを使わず、写真やテキスト、動きを組み合わせた構成です。

制作初期には生成AIを使って構成案やビジュアルイメージを整理したことで、完成イメージを早い段階で共有でき、制作もスムーズに進んだとのこと。映像というと実写を思い浮かべがちですが、「難しい情報をどう分かりやすく見せるか」という意味では、アニメーションもひとつの有効な方法だと感じました。

採用ムービーは、社員さんの“話しやすさ”まで設計する

次はディレクターの待島から建設関連企業の採用ムービー。施工管理職の仕事内容や人柄を伝えるため、複数の現場で社員インタビューを撮影し、3本の動画にまとめた案件です。

ここでも課題になったのが、出演者の緊張。対象者によって話す量や声のトーンに差が出てしまい、「もう少し事前に話す内容を整理しておけばよかった」という振り返りがありました。さらに、映像専門会社を間に入れない体制だったため、当日の進行や場の盛り上げ、音の管理までディレクター側で担当。

映像案件では、画角や構成だけではなく、出演者が自然に話せる環境をつくることもディレクションの一部なんだと改めて感じます。

AIを事前準備に使うと、撮影現場が変わる

次にモデレーターであるディレクターの北川から、これから公開予定のインフラ企業の採用インタビュー案件では、少し違った進め方も共有されました。

まず撮影前に、出演する社員さんへGoogleフォームでアンケートを実施。その回答をAIに読み込ませて、質問案や構成コンテを作成しました。さらにAIから、「質問文を一度復唱してから回答してもらう」「話し始める前に少し間を取る」といったアドバイスも出てきたため、それを実際の撮影現場でも試したそうです。

結果として、編集しやすい素材が撮れただけでなく、出演者の表情も自然になり、クライアントさんからも高い評価を得ることができました。今回かなり参考になったのが、AIを完成物をつくるためではなく、“撮影前の準備”に使う方法。事前準備の精度が上がれば、現場にも余裕が生まれます。これは今後の映像案件でもかなり使えそうです。

海外向けプロモーションは、現場対応力も重要

最後にディレクターの沖田からは海外向けの観光プロモーション案件についての共有もありました。インフルエンサーや動画クリエイターと一緒に地方を巡りながら、地域の魅力を海外へ発信する企画です。

こうしたロケ案件では、天候による予定変更や現地でのアポイント調整など、撮影そのもの以外の部分も大きく影響します。さらに、クライアントと制作側で「何を魅力として伝えるのか」という認識がズレていると、現場での判断も難しくなります。

映像案件は、撮影日にカメラを回せば終わりではなく、事前の目的共有から現場対応まで含めてディレクションする仕事なんだと感じました。

映像って、結局何に効くんだろう?

今回いろいろな事例を聞きながら、個人的に気になったのが、「動画を入れることで、実際に何が変わるのか?」ということでした。

クライアントさんへの提案で、「採用ページに動画を入れませんか?」と提案しても、「動画を入れれば採用率が上がります」とは、なかなか言い切れません。問い合わせや応募が増えたとしても、それが動画だけの効果なのかを判断するのも難しい。だから映像は、数字に直接効くというよりも、会社を理解してもらう。仕事の雰囲気を伝える。ブランドの印象を残す。働いている姿を想像してもらう。といった、コンバージョンの少し手前にある部分に効くものなのかもしれません。

だからこそ、「動画をつくる」ことから考えるのではなく、誰に、何を伝えるために映像を使うのか。ここを最初に決めることが大事だと思います。

サイトに載せて終わりにしない

もうひとつ今回出てきたのが、制作後の映像の使い方です。Webサイト用に動画を一本つくって、それだけで終わる。それでは、せっかく撮影した素材が少しもったいない。今回の案件の中には、横長のWeb用動画と、スマートフォン向けの縦動画を同時に制作している例もありました。Webサイト。SNS。YouTube。採用説明会。営業資料。広告。最初からこうした利用シーンを想定して撮影しておけば、ひとつの素材をさまざまな場所で活用できます。いわゆる「ワンソース・マルチユース」です。

これからGEAR8が映像を提案していくなら、動画単体ではなく、制作した素材をどう使い切るかまで含めて提案することが重要になりそうです。

映像を提案できるディレクターになる

今回のTERAKOYA 8を通して感じたのは、映像ディレクションには、Webとはまた違った難しさがあるということ。企画を考える。撮影前の準備をする。出演者が話しやすい雰囲気をつくる。撮影スタッフと連携する。現場で判断する。そして撮影後、どこでどう使うかまで考える。映像を一本つくるだけでも、ディレクターが考えることはかなりあります。

ただ、その分、写真や文章だけでは伝えづらい「人」「空気」「動き」を伝えられるのも映像の面白いところです。今後は今回の事例をベースに、クライアントさんにも提案しやすく、自分たちもしっかり知見を残せる映像制作のパッケージや提案テンプレートも考えていく予定です。

「動画をつくりませんか?」ではなく、

「この課題なら、映像をこう使うと伝わります。」

と自信を持って提案できる。そんなディレクターを目指すための、今回のTERAKOYA 8でした。

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Yusuke Hatano

1975年福岡に生まれて、横浜で育って、今は北海道在住です。大学卒業後、PCインストラクターとなり北海道エリアの立ち上げで札幌に転勤してきました。その後、その会社を退職したものの、そのまま札幌に移住しました。 ウェブの世界に興味を持ったので、仕事をしながらデジタルハリウッド札幌校でウェブサイト構築について勉強。卒業後、いくつかのウェブメディア構築運営に携わり2015年に友人に紹介してもらったGEAR8に入社して現在に至ります。 家に帰ると娘2人の父親として奮闘中。最近は自宅のスマートホーム化に目覚め、日々新しいガジェットを研究しています。