日差しが強い日も増えてきて、もう少しで夏の気配を感じそうな今日この頃です。
今月も、私(大道)が個人的に気になったサイトを紹介していきます。
つくる側の視点で気になったウェブサイトを、つくる側の目線で少しずつ言葉にしていくこの企画。
第五回目です。今回も対談形式でサイトを取り上げていきます。
今回ご紹介するのはこちら。
絶滅危惧野菜を救え by SOLAMENT®
https://endangeredveggies.smm.co.jp/

テクノロジーの話なのに、最初に「野菜」が立ち上がってくる
まほ:今回のサイト、タイトルから気になりました。「絶滅危惧野菜を救え」って、面白いですよね。野菜に“絶滅危惧”って言葉がつくと、かなり気になります。
ひなこ:わかります。最初に見たとき、環境問題のサイトかな?農業のサイトかな?と思ったんですけど、実は住友金属鉱山の素材テクノロジー「SOLAMENT®」を活用したプロジェクトサイトなんですよね。
まほ:金属鉱山の会社と、野菜。最初はあまり結び付かなかったです。
ひなこ:ですよね。企業の技術紹介として始めるのではなく、まず「失われつつある在来野菜」というテーマから入っている。だから、難しい素材技術の話なのに、入口がすごく身近なんです。
まほ:たしかに…。技術を先に説明されるより、「この野菜たちを守るためのプロジェクトなんだ」の方がすっと入ってくるかも。
ひなこ:デザイナー目線で見ると、こういう情報の順番ってすごく勉強になります。すぐに機能やスペックを見せるのではなくて、まず「なぜ必要なのか」を伝える。その後に技術の話が出てくるので、内容が入ってきやすいんですよね。

不思議でインパクトのある3DCGの野菜
まほ:最初に出てくる野菜のビジュアル、かなり印象的でした。写真っぽいようで、でも現実の野菜そのままではない、回転する3DCGの野菜たち。
ひなこ:個性豊かな在来野菜を3DCGで見せているのが、このサイトの大きな特徴ですよね。野菜って普通に見せると、どうしても「食材」や「農産物」の印象になりやすいと思うんですけど、このサイトでは少し彫刻みたいに見えました。まんまじゃないから異物感があって面白いですよね。
まほ:たしかに、存在感がありますよね。少しゲームっぽくて、でもちゃんと主役に見える。
ひなこ:ビジュアル感はありつつ、杉箸アカカンバ、三毛門カボチャ、佐土原ナス、早稲田ミョウガ、信州カブなど、それぞれの形や色の違いがしっかり立っていて、「在来野菜ってこんなにあるんだ」と視覚的にわかります。
まほ:しかも背景や余白がシンプルというか、宇宙っぽいので野菜の形がより際立って見えました。
ひなこ:派手な色をたくさん使うのではなく、全体はベージュや黒を基調にしていて、そこに野菜の色が浮かび上がる感じですよね、宇宙に野菜が浮いているような…。テーマは社会課題だけど、重くなりすぎないよう面白さもありつつ、でも軽くもならない。そのバランスがすごく上手だなと思いました。
「かわいい」だけで終わらせない情報設計
まほ:在来野菜の紹介部分も、ただ写真と説明文が並んでいるだけじゃなくて、栽培地域や栽培期間、日射量、地温、降水量みたいな情報が細かく載っていましたよね。
ひなこ:私も気になりました。見た目はかなりビジュアルが強いのに、情報はちゃんと具体的なんです。野菜のストーリーだけではなく、「どういう環境で育つのか」まで整理されています。
まほ:最初は「野菜を守ろう」という感情的なメッセージで入って、だんだん現実的な条件の話になっていく感じがしました。
ひなこ:そうですね。デザインとしては、情緒とデータの両方を行き来できる構成になっていると思います。こういう情報量の多いコンテンツをどう見せるかって、かなり悩むところじゃないですか。
まほ:悩みます…。説明が多くなると、すぐ資料っぽくなっちゃう。これ、読む人いるかな…とか思います。
ひなこ:でもこのサイトはスペック表のような情報も、カードの一部として見せたり、3DCGの野菜と組み合わせたりして、動く読み物として見られるようにしていますよね。アニメーションや動線を工夫して、単なるデータっぽく見せないようにしているなと思いました。

マッチングマップが「参加できるかも」に変えている
まほ:途中に出てくるマッチングマップも面白かったです。宇宙ビッグデータを使って、栽培に向いている土地を探すという内容ですよね。
ひなこ:はい。ここでサイトの見え方が少し変わる感じがしました。それまでは「在来野菜とそれを守るためのテクノロジーを紹介するサイト」として見ていたんですけど、マップが出てくることで「自分の土地でも関われるかもしれない」という方向に広がっていく。
まほ:見て終わりじゃなくて、参加につながるんですね。
ひなこ:そうです。プロジェクトサイトとして大事なのは、知ってもらうだけではなく、次のアクションにつなげることだと思うんです。このサイトの場合、「絶滅危惧野菜をテクノロジーで守りましょう」と言うだけではなくて、栽培適地を探す仕組みを見せることで、参加のイメージを具体化している。
まほ:お問い合わせへの導線も、急に営業っぽくならないですよね。
ひなこ:そこも良いですよね。社会課題を知る、野菜を知る、作り手を知る、それらを守るための技術を知る。そして「一緒にできるかも」と思う。その流れが自然です。サイト全体で少しずつ気持ちに寄せてっている感じがしました。
農家さんの声が、サイトに温かさを出している
まほ:私、農家さんの紹介が入っているところも好きでした。技術のサイトなのに、人の顔がちゃんと出てくる。
ひなこ:そこがこのサイトの温かさをつくっている気がします。SOLAMENT®という素材技術や、衛星データの話だけだと、かなり先端的で少し冷たい印象になりそうですが、農家さんや専門家、継承者のストーリーがあることで、「誰のための技術なのか」がわかります。
まほ:野菜を守るだけでなく、その野菜を育ててきた人や地域の文化ごと守る話なんだなと思いました。
ひなこ:うん。デザインで言うと、写真や名前、肩書きの見せ方も大げさすぎなくて、プロジェクトの一員として自然に紹介されているのが良いなと思いました。主役が野菜含めたくさんある構成だなと。
まほ:住友金属鉱山の技術を紹介するサイトだけど、企業の話に閉じていない感じです。
ひなこ:そうですね。技術を自慢するのではなく、社会の中でどう役立つかを見せている。ブランディングとしても、すごく誠実な見せ方だと思います。
スクロールの動きが、探索している感じに近い
まほ:サイトを見ていると、スクロールするたびに画面の奥行きが変わる感じがありました。野菜や文字が浮かび上がってきたり、マップに入っていったり。
ひなこ:動きがけっこうダイナミックですよね。でも、ただ派手に見せているというより、「土地を探す」「野菜を発見する」みたいな体験に近いのかなと思いました。
まほ:なるほど。ユーザーが画面の中を探索している感じ。
ひなこ:そうそう。特にこのテーマって、過去から受け継がれてきた野菜と、未来のテクノロジーが同時に出てくるじゃないですか。その時間の奥行きみたいなものを、スクロールやアニメーションでも表現しているように感じました。
ひなこ:そしてこのサイトを見ると、動きにもちゃんと意味があるなと思います。野菜の存在感を強めるため、地図やデータへの興味を持たせるため、次のセクションへ自然に進ませるため。アニメーションが装飾ではなく、理解の流れを助けている感じがしました。
難しいことを、難しいまま終わらせない
まほ:SOLAMENT®って、近赤外線とか遮熱とか、言葉だけ見るとちょっと難しそうですよね。
ひなこ:そうですね…。でもこのサイトでは、いきなり専門用語を深掘りするのではなく、「暑さから農業や野菜を守る技術」として伝えているので、かなり受け取りやすくないですか?
まほ:技術の説明を簡単にしすぎると薄くなりそうだけど、専門的にしすぎると読まれない。その間を取っている感じですね。
ひなこ:うん。しかも、ハウス内の地温を下げる遮熱ネットや、猛暑でも作業しやすい農業用ウェアなど、実際の使用方法が具体的に出てくるので、「技術が現場でどう使われるか」が想像しやすい。
まほ:素材テクノロジーのサイトなのに、最終的に思い浮かぶのは畑で働く人なんですよね。
ひなこ:それがすごく良いなと思います。技術の説明って、ついすごさを伝えたくなるけど、このサイトは役に立つ先を見せていますよね。何を主語にするかで伝わり方が変わるんだなと感じました。
社会課題を、重くしすぎずに伝える
まほ:「絶滅危惧野菜」という言葉は重いけど、サイト全体は暗くないですよね。
ひなこ:そうですね。危機感はあるけれど、まだできることがある、関われる余地がある、という前向きな印象が残りました。
まほ:3DCGのビジュアルも、少し未来感がありますよね。古くからある野菜の話なのに、そう見えない。
ひなこ:そこがこのサイトらしさだと思います。伝統を守る話を、懐かしさで表現しない。テクノロジーやデータ、現代的なビジュアルを組み合わせることで、昔のものを保存する、ではなく、未来につなぐ、印象になっている。
Gear8でも
今回取り上げた「絶滅危惧野菜を救え by SOLAMENT®」は、素材テクノロジーの機能をただ説明するのではなく、その技術が「誰を支え、何を未来につなぐのか」までを丁寧に説明しているサイトでした。
在来野菜という身近な存在から入り、農家さんの声、栽培条件、マッチングマップ、SOLAMENT®の技術へとつながっていく構成。
社会課題、伝統、テクノロジー、データという難しそうな要素を扱いながらも、見る人が置いていかれないように設計されている点が印象的でした。
対談の中でも話題に上がりましたが、こうしたサイトはビジュアルの強さだけで成立しているわけではないと思います。
「何を最初に見せるか」「どこで人の顔を出すか」「専門的な情報をどのくらいの温度感で伝えるか」。
そうした細かな設計の積み重ねによって、プロジェクトの姿勢や企業の信頼感が伝わってくるのだと思います。
gear8でも、伝えたいことの順番や、誰にどんな気持ちになってもらいたいかを一緒に考えていきます。
まだ言葉になりきっていない取り組みや、少し複雑で説明が難しい事業でも、「こういう見せ方ってできるのかな?」くらいの段階からお話しできたらうれしいです。
話していく中で、伝えるべき魅力や、見せ方のヒントが少しずつ見えてくることもあります。
もし今回の対談を読んで、プロジェクトやサービスの伝え方について少しでも引っかかるものがあれば、いつでも気軽に相談してください。





































