コンコースを抜けてスタンドに入ると漂う芝生の香り。サポーターがひとつになって選手を後押しする熱気。ゴールの瞬間にスタジアム全体を包み込む興奮。これまで北海道に様々な感動を届けてきた北海道コンサドーレ札幌様。そのタイ語のグローバルサイトを当社で制作しました。メインターゲットはもちろんタイの方々。観戦チケットやグッズの販売促進、クラブの認知度向上が目的です。
北海道札幌とタイのつながりは、2017年のチャナティップ選手入団からという印象が強いのですが、実は2013年からタイ・リーグのコンケーンFCと提携しており、縁の深い関係なのです。その歴史も踏まえ、これからタイにおける展望などを竹内一弘さんと横野純貴さんに伺いました。横野さんは2008年に北海道コンサドーレ札幌のアカデミーからトップチームに昇格し、2014年からタイ・リーグに戦いの舞台を移して活躍した元選手。2024年から元選手として初めてスタッフとして入社され話題を集めました。このプロジェクトにおけるディレクター・梅木とは、Gear8 Thailand設立時に赴任した時からの仲。戦う世界は違っても異国の地で挑む姿にお互いシンパシーを感じていたそうです。
タイ人が好きな2つのコンテンツを持つクラブの強みを活かすために。
梅木:当初いただいた資料を見直すと、タイの方々は本当にサッカーが好き。それに加えて札幌の街なかを歩くタイ人観光客を見ても分かるとおり、北海道人気も根強い。御社は北海道のサッカークラブとして、タイ人が好きな2つのコンテンツを持っていらっしゃいます。この強みを活かすためにタイ語によるグローバルサイトを作ろうとお考えになったと記憶しているんですが、改めて当時どういった課題を持っていらっしゃったかお聞かせいただけますか。
竹内さん:まず、そもそもタイ語ってパッと見で分からないので自分たちでセルフチェックのしようがないんです。英語であれば、なんとなく意味合いがわかったりするんですけど。だから、自分たちだけではどうしようもないなと。それが課題のひとつだったのでタイ語がわかる専門の方に入ってもらおうと考えました。
もうひとつの課題が、タイ人は「サッカー好き」、「北海道にいっぱい来ている」ということが数値で実証されているものの、その結果としてどれだけの人が札幌ドームまで試合を見に来ているのかが把握しきれていなかったんです。正直、タイ代表の選手もいるし、きっと来てくれているんだろう…それくらいの感覚でした。でも、それらをしっかりと見える化してプロモーションできるように整えれば、さらにタイからの来場やグッズの販売が増やせるんじゃないかと考えたんです。
梅木:そのベースを作るためにグローバルサイトを制作することになったんですね。
竹内さん:そうですね。これまでの感覚でインバウンドのお客様を呼ぼうと考えると、まず旅行会社や団体ツアーを思い浮かべがちです。でもコロナ禍の影響もあって、タイをはじめとした東南アジアの方はほぼFIT、いわゆる個人旅行が主流になっています。だから旅行会社との提携は、あまり効果がないだろうと考えました。そうなると個人旅行で既に来ている人、これから来るであろう人に向けて接点を持てるようなプラットフォームを作った方がいいと思い、今回の制作に至ったわけです。
タイ人の憧れを、さらに大きく膨らませるグローバルサイトへ。
梅木:サイト開設のタイミングで、タイのショッピングモールを借りてイベントを開催されましたよね。私たちは普段からWebサイトや広告の運用を担当させていただくことが多いんですが、個人的には良いWebサイトを作ってもリアルのイベントや施策と上手く噛み合わないとあまり良い効果が出ないと考えています。だから、このイベントは非常に良い相乗効果になるんじゃないかなと感じていました。
竹内さん:やはり直接ふれあうことは、お客様の心を掴む上でとても大切なこと。こういった活動を積み重ねることが、北海道コンサドーレ札幌への憧れにもつながってくるのかなと考えているので来季以降も可能な限りチャレンジしていきたいですね。
梅木:それとはまた別にタイでユース年代の選手を対象にしたセレクションを行うんですよね。
横野さん:僕もタイのサッカー用語がわかるので同行します。今回のセレクションで2人ほど選手を選んでU18チームの練習に参加してもらう予定です。
竹内さん:意外と私たちが思っている以上に北海道コンサドーレ札幌に憧れているタイ人選手は多いですね。ヨーロッパでプレーしている日本人選手に日本の子どもたちが憧れるように、チャナティップ選手やスパチョーク選手の存在はかなり大きいんだと思います。
梅木:Facebookのグローバルアカウントを見ていてもタイのサポーターが、日本人のサポーターと同じような熱いコメントしていますよね。負けても愛のある言葉が書いてあったり…北海道コンサドーレ札幌はタイ人から憧れられていると同時に、強く愛されているクラブなんだなって思いました。
横野さん:タイの人は結構SNSにコメントしてくれますね。本当にサッカーが好きで、北海道コンサドーレ札幌のことも好きでいてくれる。だからこそ、もっと北海道の強みを活かしていきたいんですよ。長く北海道に住んでいると感じませんが、「雪」ってタイ人にとっては魅力的なもの。わざわざ冬に観光で来るのも雪を体験したくて来るんです。そういう部分で考えると2026年から予定されているJリーグのシーズン移行(春秋制から秋春制)は大きなチャンス。竹内くんとも常々話していて、冬の北海道を観光で楽しんでもらいながら途中でスパチョーク選手の試合が観戦できるような企画を立てられたらいいなと考えています。そうなったら今回制作したサイトが、より活かせるんじゃないかと思いますし。
竹内さん:その点、今回制作いただいたサイトでもサッカー観戦の情報だけではなく、プラスアルファの要素も盛り込んでいます。観光のモデルプランを掲載して、北海道コンサドーレ札幌の試合の前後にどんなことが楽しめるのかを知っていただき、旅行全体のイメージが描きやすいように配慮しました。
サッカーを中心に広がる人と人とのつながり、そしてビジネスの可能性。
梅木:サイトがオープンしてからの反応はいかがですか?
竹内さん:まだ実際の数値や実態の効果まではヒアリングできていないんですが、現状ではクラブのホームページにタイ語表記としてグローバルサイトがリンクされたのは大きいですね。
横野さん:毎試合最低でも1組はタイの方から「チケットはどこで買えばいいんだ」って問い合わせが来るんです。その時に「このサイトにアクセスすれば買えるんですよ」って伝えられるので助かりましたね。まだ効果は分からないんですが、SNSで個人的に「こういうサイトを作りました」って上げたら「ギアエイトさん、ありがとうございます!」ってサポーターのコメント多かったですよ。
梅木:確かに弊社スタッフの友人が横野さんのファンで、その方から「紹介されてるよ!」って人伝で聞いて横野さんはやっぱり影響力を持っているなと感じました。話が変わるんですが、今回制作を担当させていただいて、このグローバルサイトはおふたりが目指していることの、ほんの一部なのかなと思っています。これからプロモーション面も含めてどのような展開をお考えですか。
竹内さん:今後、実際の来場数やチケットの売上なんかが実証されていけば、コンテンツをさらに充実させていけると思います。いずれにしても、そこに向けた最低限のベースを作った段階なので今はやっとスタートラインに立った感じですね。
横野さん:このグローバルサイトを活かして、もっとタイの方に北海道コンサドーレ札幌の魅力や試合告知を発信していきたいですね。例えば練習場がある宮の沢には、パートナー企業様が運営する「白い恋人パーク」もあり、タイの方も含めてたくさんの外国人観光客が訪れています。そこでプロモーションをしたら効果があるんじゃないかと考えているところです。
竹内さん:確かにパートナー企業様のリソースを活用するところまで至っていないので、そこを強化するとアクセス数も増えていくのかもしれません。そういえばGear8さんもサッカークラブをスポンサードされているんですよね。
梅木: 2024年から縁あってカンボジアのサッカークラブをスポンサードしています。先日も出張でカンボジアを訪れた時にバーで観戦したんですが、そこで他のお客さんにスポンサーをやっている会社に勤めているってことを話したらビールを奢ってくれたり、一緒に飲もうって言ってくれたり、あっという間に打ち解けることができたんです。サッカーの力って本当にすごいなと改めて感じました。
竹内さん:サッカーには、そういったコミュニケーションのきっかけになる力があると思っています。クラブへの関わり方って色々な方法がありますけど、サッカーを核にして全く違う方面へと発展させることもできるんです。時には国境を越えて。最終的なゴールがないというか「こんなことも、あんなこともできるじゃん」というように次から次へと広がっていく可能性を持っているんです。特に東南アジアって環境が整っていない地域がたくさんあると思うので、例えばスタジアム周辺のまちづくりも含めて北海道コンサドーレ札幌を媒介にして北海道の企業が関わっていけるようになると良いですよね。
横野さん:まずは北海道コンサドーレ札幌として、どれだけ東南アジアからのインバウンドの価値を高められるか。そのために2人で頑張っていきます。
竹内さん:社内的にも、ここまで海外と接点がある仕事って実はあまりないのかなと思っています。サッカーに限らず色々な可能性があることを他のスタッフにもより深く知ってもらいたいですね。
梅木:最後に、今回のグローバルサイトも含めておふたりが見据えている未来について教えてください。
竹内さん:タイも含めた外国人観光客が「北海道コンサドーレ札幌のサッカーを観るために旅行に来る」こと、それが目指すべき理想像です。北海道は日本の他の地域に比べたら観光客数という点ではアドバンテージがあるので、あとは動線づくりがポイントになってくるのかなと思っています。
横野さん:北海道っていう環境に目を付けたタイ企業を、もっともっとパートナーとして増やしていってアジアをつなぐビッグクラブになれたらいいなと思っています。いずれ私たちもACLに出たいですし、J1で優勝したいと思っているので、常日頃から世界に目を向けていきたいですね。
北海道コンサドーレ札幌グローバルサイト
札幌市を中心とする北海道をホームタウンとする、日本プロサッカーリーグに加盟するJ2所属のプロサッカークラブ
ギアエイト実績 北海道コンサドーレ札幌グローバルサイト