2025.12.17

採用サイト「数字で見る当社」の構成・デザイン事例|魅力的なコンテンツの作り方

Wataru Machishima

採用サイトの構成を検討する際、「数字で見る」「データで見る」「3分でわかる」といったコンテンツのご相談をいただくことがあります。求職者にとっても、企業の全体像を短時間で掴めるコンテンツとして、すっかり定着しつつあります。

この記事では、

  • これから自社の採用サイトを整えたい企業のご担当者
  • 採用サイト制作に携わるウェブディレクター

の方を主な対象として、「ただ数字を並べるだけでなく、企業の誠実さや温度感が伝わるページ」にするための設計ポイントをまとめました。

1. 採用サイトに「数字で見る」コンテンツが必要な理由

求職者にとっての「最後の確認」としての役割

志望企業を研究する際に、6割以上の学生が『個別企業のホームページ』を最も有益な情報源として挙げています(63.1%/キャリタス「2025年卒 採用ホームページに関する調査」)

ナビサイトや説明会で興味を持った後、最終的に「本当に自分に合う会社かどうか」を確認するために、公式サイトをじっくり読み込む傾向があるようです。

「よく知らない会社」を短時間で理解したいニーズ

特に、まだ社名や事業内容が広く知られていない企業の場合、求職者は

  • まずはどんな会社かざっくり知りたい
  • 自分に合いそうかどうか、ある程度判断したい

と考えています。

「風通しの良い社風」といった言葉による表現も大切ですが、それだけでは実態が見えにくいこともあります。
そこで、平均年齢や有給取得率といった客観的な数字が、信頼を裏付ける材料として機能します。

ただし、数字をただ羅列するだけでは、その会社の本当の良さは伝わりません。
「なぜその数字なのか」「そこからどんな風景が想像できるか」というストーリーまで丁寧に設計することで、初めて「いい会社かもしれない」という共感につながります。

2. 制作前の設計:ターゲットとページの構成(箱)を決める

数字を集め始める前に、まずはページの役割と構成を丁寧に定義することをおすすめします。

ターゲットと「読後感」を言語化する

最初に整理したいのは、

  • 誰に向けたページなのか
  • 読み終えたときに、どう感じてほしいのか

の2つです。

ターゲットの例

  • 即戦力となる中途採用がメイン
  • ポテンシャル重視の新卒採用がメイン
  • 中途と新卒どちらも一定数採用したい など

読後感の例

  • 「未経験でも安心できる教育体制がありそう」と感じてほしい
  • 「忙しい業界だけれど、効率的に働く工夫をしている会社だ」と伝えたい

この「狙い」が定まっていないと、単なるデータ表になってしまいがちです。

ページ全体の「箱(構成)」を決める

一般的には、以下の5つの要素を組み合わせて構成します。

  • 会社・事業の規模感(安定性や成長性)
  • 働く人のプロフィール(どんな人がいるか)
  • 働き方・休み(働きやすさや環境の透明性)
  • 育成・キャリア(成長できる環境か)
  • 業界平均との比較(自社の客観的な立ち位置)

自社の強みに合わせて、どの「箱」を充実させるかバランスを検討しましょう。
たとえば「人材育成が強み」の企業であれば、育成・キャリアのブロックを厚めに、「働き方の柔軟さ」を打ち出したい場合は、働き方・休みのブロックを厚めに、といった調整が考えられます。

3. 「伝わる」ページにするデザイン・表現の工夫

Excelの表をそのまま貼ったような見せ方ではなく、企業の雰囲気が伝わるデザイン・構成を目指します。

数字とメッセージは「1セット」で考える

数字だけを置くのではなく、必ず「ひと言のメッセージ」を添えるのがポイントです。

(例)
平均有給取得日数:11.2日
→「オン・オフのメリハリをつけて働けるよう、休みを取りやすい環境づくりを進めています。」

平均年齢:32.8歳
→「世代の近いメンバーが多く、相談しやすい雰囲気のチームが中心です。」

年間平均研修時間:24時間
→「入社後も学び続けられるよう、定期的な勉強会や社内研修を行っています。」

ディレクターや担当者としては、「この数字から、何を読み取ってほしいのか?」を翻訳してあげるような丁寧さが求められます。

スマホで見やすい「見出し+説明+グラフ」の3点セット

スマートフォンでスクロールしながら見ることを想定し、構成はシンプルに整えます。

  • 大きめの見出し(何の数字かひと目で分かる)
  • 短い説明文(数字の背景や意味)
  • 視覚的なグラフ・アイコン(必要なら)

この3点セットが揃っていると、「数字を読む」というより「情報を眺める」感覚で理解してもらいやすくなります。

色使いと動きで視線を誘導する

重要な数字にはブランドカラーを使い、補足情報は落ち着いた色にするなど、情報の優先度を色で整理するのも有効です。

  • 主役の数字・キーワード:ブランドカラーなど視認性の高い色
  • 説明文・注釈:トーンを落とした色
  • 比較グラフ:自社と比較対象で2色に絞る

アニメーションは、スクロールに合わせてグラフが伸びるなど「静かに視線を誘導する」程度に留めると、読みやすさを損ないません。
派手な動きが多すぎると、「数字の意味」よりも「演出の印象」が勝ってしまうので注意が必要です。

4. 掲載すべき数字・データ項目の一覧

企業規模・環境・カルチャーなどの項目例

一般的には以下のような項目が挙げられますが、「とりあえず全部」ではなく、「この会社の“中身”が想像できる数字はどれか?」という視点で絞り込むと効果的です。

企業・事業

  • 創業年数
  • 売上推移
  • 拠点数
  • 取引社数 など

  • 平均年齢
  • 男女比
  • 新卒・中途比率
  • 文理比率
  • 職種構成 など

環境

  • 月平均残業時間
  • 有給取得率・平均取得日数
  • 育休・産休復帰率
  • リモートワーク・フレックス実施率 など

カルチャー

  • 社内イベント数
  • 部活動・サークル数
  • 出身地や居住エリアの分布
  • 休日の過ごし方(アンケート結果) など

離職率など「出しにくい数字」の扱い方

離職率や残業時間など、一見ネガティブに見える数字を出すべきか迷うこともあるかと思います。
基本的には、誠実さを示すために「出せるものは出す」スタンスが好印象につながりやすいと感じています。

たとえ数字が完璧でなくても、

  • なぜその数字なのか(背景)
  • 現在どう改善に取り組んでいるか(意思)

をセットで伝えることで、企業の透明性や誠実な姿勢をアピールできます。
「数字そのもの」だけで判断されないように、説明や今後の方針を一緒にデザインすることがポイントです。

5. 「納得」を次の「アクション」につなげる導線設計

「数字で見る」ページは、求職者の興味や志望度を高めるための「助走」のようなコンテンツです。数字を見て「この会社、自分に合うかもしれない」と感じた気持ちを、スムーズに次のステップへ案内する導線(リンク)を用意しましょう。

関連する詳細ページへ「横移動」させる

数字の項目を見て興味を持ったユーザーが、さらに深い情報を知れるよう、関連ページへのリンクを設置します。「定量データ(数字)」と「定性情報(インタビューや制度)」を行き来できるようにすることで、納得感がより深まります。

  • 「平均残業時間」の近くに → 「1日のスケジュール」や「働き方・制度紹介」ページへのリンク
  • 「プロジェクト規模・取引社数」の近くに → 「プロジェクト事例」や「社員インタビュー」へのリンク
  • 「新卒・中途比率」の近くに → それぞれの「募集要項」へのリンク

ページ下部には「次のアクション」を明確に

ページの最下部(フッター直前)で、行き止まりにならないように注意が必要です。単に「ENTRY」ボタンを置くだけでなく、ユーザーの心理的ハードルに合わせた選択肢を用意してあげると親切です。

(例)心理的ハードルに合わせたボタンの使い分け

  • ハードル低:「まずは条件を確認したい」
    • [ 募集要項を見る ] [ 職種一覧を見る ]
    • ※数字を見て興味は湧いたが、まだ応募する決心まではついていない層向け
  • ハードル高:「すぐに応募したい」
    • [ エントリーフォームへ ] [ 採用イベントに参加する ]
    • ※志望度が十分に高まった層向け

この数字を見終わった求職者は、次にどんな情報を欲しくなるだろうか?」と想像力を働かせ、迷わせないための道筋を敷いておくことが大切です。

6. 情報の鮮度を保つ更新運用のルール

せっかく作ったページも、情報が古くなってしまっては信頼に関わります。
制作段階で、無理のない運用ルールを決めておくことが大切です。

  • 更新は「年に1回」と決める(例:4月や決算期に合わせて)
  • 「いつ時点の数字か」を明記する(例:2025年4月1日時点)

月ごとの細かい変動を追うよりも、「毎年きちんと情報を更新している」という運用姿勢自体が、求職者への安心材料になります。

7. よくあるご質問(Q&A)

コンテンツ制作にあたって、よくいただく疑問をまとめました。

Q. グラフやイラストを多用すれば分かりやすくなりますか?

A. 「絵にすれば伝わる」とは限りません。
まずは「何を伝えたいか」というメッセージをテキストでしっかり整理することが大切です。
装飾はそのメッセージを補助するために使いましょう。

Q. 業界平均との比較は必要ですか?

A. 必須ではありませんが、客観的な説得力を高めるには有効です。
「自社」と「業界平均」の色を分け、出典元を明記して掲載すると、求職者が自社の立ち位置を理解しやすくなります。

Q. どこまで細かい数字を出せばよいか分かりません

A. 迷ったときは、

  • 会社の“中身”が想像できるか
  • 求職者の不安を軽くできるか

という2つの観点で判断してみてください。
それでも判断に迷うものは、無理に出さず、別のコンテンツ(社員インタビューなど)で補う方法もあります。

8. 構成や見せ方が参考になる「数字で見る」事例サイト集

最後に、構成や見せ方で参考になる事例をいくつか載せておきます(いずれも執筆時点の内容です)。

新卒〜総合職向けのバランス型

キャリア採用・中途向け

事業スケールも打ち出すタイプ

エンジニア・技術職採用寄り

そのほかの参考サイト

ディレクター的な見方のコツは、

  • どんな「箱」に分けているか(構成)
  • 見出し・数字・説明文・グラフのバランス
  • 色の使い方とジャンプ率
  • ページの最後に、どこへ誘導しているか

の4つを意識して眺めてみることです。

【おまけ】制作・公開前のセルフチェックリスト

最後に、制作の各工程で振り返りに使えるリストを用意しました。企画段階での整理や、公開前の最終確認にご活用ください。

1. 企画・設計(着手前段階)

ターゲットは明確か (新卒メインか、中途メインか、あるいは両方か)

「読後感」のイメージは共有できているか (読み終えた求職者に、どんな印象を持ってほしいか言語化できているか)

構成の「強弱」は決まっているか (規模・人・環境・育成・比較の5つの要素のうち、どこを重点的に伝えるか)

2. 原稿・構成作成(制作中段階)

数字を補足するメッセージができているか (数字を置くだけでなく、その意味を伝える「ひと言メッセージ」が添えてあるか)

スマホで見やすいセットになっているか (「見出し + 短い説明 + グラフ/アイコン/図」のセットで構成されているか)

視線の誘導はスムーズか (見てほしい数字や箇所に、色や大きさでメリハリがついているか)

ネガティブな数字へのフォローはあるか (一見マイナスに見える数字に対し、背景や改善の意思をセットで記載しているか)

3. 運用・公開準備(公開前段階)

集計時点の日付は入っているか (「2025年4月時点」など、いつのデータか明記されているか)

更新ルールの合意は取れているか (「年1回、決算後に更新」など、無理のない運用サイクルが決まっているか)

まとめ:数字を通して企業の「誠実さ」を伝える

採用サイトの「数字で見る」ページは、単なるデータ集ではありません。
会社・人・働き方を俯瞰できる、いわば「会社のダイジェスト紹介」です。

数字という客観的な事実を扱いながらも、その見せ方や添える言葉ひとつで、企業の「丁寧さ」や「人柄」は伝わります。

これから制作される皆さんにとって、この記事が「自社らしい誠実な伝え方」を見つけるヒントになれば幸いです。

【採用サイト制作をご検討中の企業様へ】

GEAR8では、今回ご紹介した「数字で見るコンテンツ」の企画・設計はもちろん、企業の空気感が伝わる採用サイトの制作・リニューアルを行っております。

「自社の魅力がうまく伝わっていない気がする」
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Wataru Machishima

1985年3月北海道登別市生まれ。小樽、函館を経て13歳から札幌在住。パンダは特別好きではなかったですが、10年も担当動物として一緒にいて今や愛着もひとしおです。

大学在学中のインターン経由で翻訳会社へ入社し営業マンとして外国語のツールやウェブ制作に携わりました。制作会社に移り3ヶ月だけウェブデザイナー、その後ディレクターとなり2年で167件のディレクションを担当し精神を鍛えたのち、2012年からGEAR8でディレクターです。

夏は主にファミキャンで道内キャンプ場にいます。テントはOGAWA(2022年〜)、良さげなギアを見てはポチり過ぎて赤字になります。ディレクションという仕事が好きで、担当するクライアントのためにいろいろ思考を深めます。国内のウェブ系勉強会に参加とたまに登壇も。気軽に声をかけてください!